日之丸記

気になったコト、記事にしてマス

ヨルシカ【追跡】

今回は、自己解釈と考察を交えつつ、物語の時系列について触れていくことにする。

 

・二つのアルバム


まずは、今までにリリースされたヨルシカのアルバムをおさらいしてみよう。

 

 

・2017年6月28日発売
 全7曲収録の1stミニアルバム『夏草が邪魔をする』
 
・2018年5月9日発売
 全9曲収録の2ndミニアルバム『負け犬にアンコールはいらない』
 
・2019年4月10日発売
 全14曲収録の1stフルアルバム『だから僕は音楽を辞めた』
 
・2019年8月28日発売
 全14曲収録の2ndフルアルバム『エルマ』

 

 


2019年10月現在、ヨルシカからミニアルバムも含め、4つのアルバムが発売されている。

その中でも今年リリースされた1stフルアルバム「だから僕は音楽を辞めた」の続編にあたる2ndフルアルバム「エルマ」は僅か4ヶ月という異例の速さでリリースされたにもかかわらず、その完成度の高さから凄まじい人気を博している。

 

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1stフルアルバムは、音楽を辞める決意をした青年“エイミー”がスウェーデンを旅しながら綴った楽曲を手紙にして“エルマ”という女性に宛てて贈るというコンセプト。

そして2ndフルアルバムでは“エイミー”から送られてきた手紙に影響を受けた“エルマ”が曲を手掛け、“エイミー”が旅した道を辿るというコンセプトとなっている。

 

ここで注目していただきたいのは、その2つのアルバムの収録曲だ。

 

だから僕は音楽を辞めた エルマ

01 8/31
02 藍二乗
03 八月、某、月明かり
04 詩書きとコーヒー
05 7/13
06 踊ろうぜ
07 六月は雨上がりの街を書く
08 五月は花緑青の窓辺から
09 夜紛い
10 5/6
11 パレード
12 エルマ
13 4/10
14 だから僕は音楽を辞めた

01 車窓
02 憂一乗
03 夕凪、某、花惑い
04 雨とカプチーノ
05 湖の街
06 神様のダンス
07 雨晴るる
08 歩く
09 心に穴が空いた
10 森の教会
11 声
12 エイミー
13 海底、月明かり
14 ノーチラス

 

○「踊ろうぜ」→「神様のダンス」
○「六月は雨上がりの街を書く」→「雨晴るる」


といったように曲のタイトルに繋がりがあり、まるで返答しているように見受けられる。


つまり2ndアルバムのエルマの曲は、1stアルバムで作られたエイミーの曲に応えるアンサーソングとなっているのだ。

 


だから僕は音楽を辞めた (Album Trailer)


ヨルシカ - エルマ (Album Trailer)

 

ちなみに今夏、新作アニメ映画「天気の子」が公開されたあの新海誠監督からもTwitterで賞賛されるなど、ヨルシカの知名度は着実に高まってきている。

 

・収録曲の時系列


それと、もう一つ気になった点がある。1stアルバム「だから僕は音楽を辞めた」に収録されているインスト曲の順番を見てみるとタイトルの日付が過去へ遡っており、時系列が順番通りになっていないように見える。

 

※インスト曲(器楽曲):人声を一切用いず、楽器のみで演奏された曲。器楽の為の楽曲。

  

同様に2ndアルバムの楽曲が1stアルバムの後に作られたアンサーソングだとするなら、2ndアルバムの時系列も順番通りではない可能性が出てくる。

 

では何故、この並びになったのか。


単純に考えてみると、最初に作った曲の紙を一番下に置き、最新曲を一番上になるように重ねていったからなのかもしれない。(エルマに宛てた手紙にはそのままの並びで同封した為、この順番になってしまった。)

 

しかし、己の人生を懸けて作った曲をそんな適当に扱うだろうか。

 

もう一つの考えとしては、

エルマにこの順番で聴いてほしい何らかの理由があったから。

 

やはりこの考えが一番妥当だと思われる。

 

・初回版


いずれにせよ、このままでは情報が少なすぎる為、時系列の真相にさえ辿り着くことができない。

 

何かエイミーの遺留品、もしくは彼を知るエルマの証言や思いが聞ければよいのだが…

そんな物語を追体験できる都合の良いものなんて…

 

 

 

あった。

 

それは両アルバムの初回限定版の特典である。

1stアルバムの「エルマへ向けた手紙」では、青年がエルマへ向けて書き溜めた手紙や歌詞、訪れた街の写真などを納めた木箱を再現したボックスが付属され、
2ndアルバムの「エルマが書いた日記帳」では、エルマの旅の足跡を記した日記帳と写真が封入されている。


ヨルシカの作品は音源やMVだけでも十分に楽しむことはできるが、作品とリンクした特典の手紙や写真を実際に手に取ることによって、まるで物語の世界観に入り込んだかのような追体験ができ、各楽曲の背景をより深く味わうことができる。 

 最近はサブスクリプションの音楽ストリーミングサービスなどが急増し、配信された音楽をスマホで聴くことが当たり前になってきている。

そんなCDを買う意味やCDそのものの価値が問われる今の時代に対してのヨルシカなりの答えが、この木箱や日記帳というサブスクリプションには真似できない仕掛けなのだろう。

 

さて、ここからは特別に手配することがで出来たこの二つの初回版に記された情報を読み解きながら、各楽曲について考察していくことにする。

 

 

※ここからはヨルシカの1stフルアルバム「だから僕は音楽を辞めた」と2ndフルアルバム「エルマ」の初回限定版特典の内容を含みますので、興味のある方のみご閲覧ください。

 


二つの特典には楽曲ごとに、その曲が作られたとされる日付が記されていた。

なのでまずは、情報をもとに各楽曲を並び直してみた。

 

だから僕は音楽を辞めた エルマ

3/21 藍二乗
4/10 無題(インスト)
4/24 詩書きとコーヒー
5/6   無題(インスト)
5/15 五月は花緑青の窓辺から
5/31 六月は雨上がりの街を書く
6/15 踊ろうぜ
7/1   夜紛い
7/12 パレード
7/13 無題(インスト)
8/7   八月、某、月明かり
8/25 だから僕は音楽を辞めた
8/31 無題(インスト)
8/31 エルマ

3/14 車窓(インスト)
3/22 夕凪、某、花惑い
4/5   湖の街(インスト)
5/28  神様のダンス
6/30  雨晴るる
7/8   歩く
7/22 森の教会(インスト)
7/28 声
9/3   雨とカプチーノ
9/5   憂一乗
9/6   心に穴が空いた
9/12 海底、月明かり
9/16 エイミー
        ノーチラス

 

 

ここであることに気づく。

2ndアルバムの最後の曲である「ノーチラス」にだけ日付が振られていないのだ。


MVを見てみると、ノーチラスはエイミーが海へ飛び込む直前にその題名を書いたことがわかる。従ってノーチラスは2ndアルバムに収録されてはいるが、原作者はエイミーということになる。

 

そしてその詩はエルマに宛てた手紙の中に入れられることなく、あの桟橋のギターケースの中にずっと入っていた。

 

では、ノーチラスはいつ作られたのか。MVの後半、エルマがノーチラスの詩が書かれた紙を見るシーンがある。そこに書かれていた題名と、詩の文字の濃さを見比べて見ると、ノーチラスの方が掠れていることがわかる。

(詩の部分はMVの前半で書いていた。)

 

このことから、既に詩の部分は完成されていたが、なかなか題名が付けられず、人生の最期を迎える直前で思いついたということになる。

 

日付を書かなかった理由は、もしかしたらあの時点ではノーチラスは完成しておらず、日付を書けなかったからなのかもしれない。

 

まだまだ考察の余地はあるが、ひとまず次回からは各楽曲の内容を上の表に示した時系列に沿って、読み解いていこうと思う。

 

つづき