日之丸記

気になったコト、記事にしてマス

【雑考】ジークアクスとは何だったのか

 
※この記事には『GQuuuuuuX』の世界観の根幹及びガンダムシリーズ作品のシナリオに関わるネタバレを含みますので興味のある方のみご閲覧下さい。

 

 

 

 

 

Beginning編


【ネタバレ注意】『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)-Beginning-』Promotion Reel

1月17日に公開された劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』
(以降、ジークアクスと呼ぶ)

その内容は今年の4月から始まるTVシリーズの放送に先駆けて、一部話数を劇場上映用に再構築されたものとなっており、本作は同シリーズを手掛けるサンライズと『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』で知られるスタジオカラーが共同制作している。

監督は『ふしぎの海のナディア』からガイナックスにて活動を開始し、現在はスタジオカラーに所属する鶴巻和哉氏。
メカニカルデザインを担当する山下いくと氏を含め『エヴァンゲリオン』シリーズに関わった多くスタッフもデザインワークスに名を連ねている。
脚本は『フリクリ』、『トップをねらえ2!』などの鶴巻監督作品に参加してきた榎戸洋司氏が担当。また、近年ではゴジラウルトラマン仮面ライダーといった数々の特撮作品のリメイクに携わってきた庵野秀明氏も本作の一部脚本を担当していると発表されている。

そしてキャラクターデザインを担うのはイラストレーターの竹氏。過去には『ポケットモンスター サン・ムーン』、『ソード・シールド』での一部キャラクターや、『Fate/Grand Order』の『徴姉妹』など様々な作品で活躍している。

ちなみに筆者のガンダム知識は基本的にGジェネレーション(宇宙世紀という時系列になぞらえた複数の歴代シリーズを追体験できるゲーム)で得たものと幼い頃にビデオで見た初代ガンダムの薄れた記憶程度だったが(お気に入りはユニコーン)、それでも充分にド肝を抜かれるほど楽しめた。

まず劇場の席に座り、上映が開始されて間もなく強烈な既視感を覚えた。何故ならそれはとても聞き馴染みがある内容だからだ。そしてそのまま見続けていると新たな未知の違和感が現れる。多少なりともガンダム作品を見てきた筆者でも気づけるほどに、知っているけれどこんなの知らない、記憶が錯綜するようなある種の特異点がそこには描かれていた。

 

私 は 一 体 何 を 見 せ ら れ て い る ん だ 

 

※ここから先は機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-を時系列に沿ってたどっていく。

 

 

 

冒頭、「人類が増えすぎた人口を〜」という宇宙世紀ガンダム作品を知る人ならおなじみのナレーションから始まる。

開幕に流れたこのナレーションは作中内の時代背景及び世界観について語られている。

 

それはとある未来、地球では人口が増えすぎた結果、食料問題や環境破壊が深刻になっていた。そこでその対策として宇宙に多数のスペースコロニーと呼ばれる巨大な居住区域を建設し、人類を移住させる計画が始まった。そしてコロニー移民が開始された年にこれまでの西暦が終わりを迎え、『宇宙世紀』(ユニバーサル・センチュリー。U.C.と略される)という新たな時代『U.C.0001年』が幕を開ける。

やがて地球に残った一部の富裕層や特権階級はアースノイド、宇宙移民はスペースノイドと呼ばれるようになるが、そもそも宇宙への移民は地球の統一国家である『地球連邦政府』によって半ば強制的にされたものであり、連邦政府は政治、経済の拠点を地球に置き続け、コロニーに住む人々と不平等な交易をかわすなど連邦政府に対するスペースノイドの不満はしだいに増大していった。

そしてU.C.0058年、サイド3と呼ばれるコロニー郡にてスペースノイド自治権獲得を目指し活動していたジオン・ズム・ダイクンが革命を起こし、ジオン共和国の設立を宣言。後にデギン・ソド・ザビが初代公王となるジオン公国に名を改めU.C.0079年、ジオン公国が地球からの独立を果たすため連邦政府に対して宣戦布告する。これにより一年に渡って繰り広げられるジオン独立戦争(一年戦争)が始まった。

1979年からテレビ放映された初代『機動戦士ガンダム』(以降、正史と呼ぶ)はこの一年戦争を描いた作品でジークアクスの冒頭に流れたナレーションは正史で流れたものと同様の内容だった。


第1話|機動戦士ガンダム【ガンチャン】

その後、宇宙空間を漂う3機のザクと呼ばれるモビルスーツ(MSと略される人型のロボット)が映る。赤いザクが合図を送り、3機はとあるコロニーへの侵入を図る。
その際、コロニーに備え付けられていた作業用のアームが折れ、障壁に当たった反動で宇宙空間に放り出される。

1機を通路に待機させると、2機のザクが人々が住まう居住区域に降り立つ。それに驚いたのか、2羽の小鳥がコロニー内に植えられた木々を飛び越えて羽ばたいてく。

なんとここまでの描写は正史の第1話冒頭と全く変わらず、忠実に再現されていた。
1つ異なる点といえばこのコロニーに侵入するのは本来ならジーン、スレンダー、デニムの3人だが、なぜかここにジーンはおらず、代わりに彼らの上官であるシャアが自ら出撃し、この場の陣頭指揮を執っている。

シャア・アズナブル少佐は正史における主要キャラクターの1人であり、元々このシーンは地球連邦のV作戦の情報を掴んだジオン軍の兵士が偵察に行く場面だ。

 

V作戦とはザクの量産に成功したジオン軍に対し、起死回生の一手を狙う地球連邦軍が考案した作戦で3機種の新型MSによってジオンを叩くといった目的を基に

  • MSの開発と量産化
  • MSの運用を前提とする専用母艦の建造
  • MSの運用方法の確立

という三本の柱で成り立っているものであった。

また、地球連邦が開発した

この3機のMSを同時展開して闘う戦術も生み出されている。

このV作戦を察知したジオン公国赤い彗星ことシャア・アズナブル率いる部隊が、地球連邦が開発した兵器の運用試験が行われているスペースコロニー『サイド7』に偵察にやってくるところからガンダムの物語は始まる。

正史ではコロニー内でデニムと行動を共にするのはジーン(ジーンズが由来)のはずだったが、ジークアクス世界線では何故かジーンの機体が故障しているためシャアがその任務にあたっていた。

そしてデニムがコクピットから出て双眼鏡で辺りを観察し、車が1台通り過ぎたと発言する。実は正史だとこの車には主人公アムロ・レイのガールフレンドであるフラウ・ボゥアムロの家に向かうために乗っていたものであり、作中でアムロは一切登場してこないが、このデニムの発言により彼が存在していることが示されている。

その後、2人は連邦軍がMSのパーツをどこかに運ぼうとしている様子を観察していたが、それまではあくまで偵察が任務だったにも関わらず、シャアが「私がみすみす手柄を逃すような男と思うか」と言い出して連邦軍のMSを破壊し始める。

正史ではジーンが功を焦りサイド7の人員や設備を手当たり次第に攻撃した結果、アムロガンダムに搭乗するというジオンが敗北するきっかけを作ってしまうことになるが、もう一つの世界線ではシャアはMSのパーツに標的を絞り、その最中、横たわっているガンダムを見つけたことで任務が偵察から強襲、そして強奪へと替わっていった。

シャアが見つけたガンダムは機体のメカデザインが一新されていた。デザイナー繋がりによるものなのか、複眼のような六つ目のカメラアイにエヴァンゲリオンを連想する異様な容貌をしており、ガンダム特有のトリコロールカラーではあるが、シルエットが細長くガンダムとは似て非なるデザインとなっていた。

機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 公式サイト

ガンダムに乗り込んだシャアはザクと比べて5倍以上のエネルギーゲインがあることに(アムロと同様に)驚きつつ、ガンダムをコロニーの大地に立たせた。この時、スクリーンにガンダムの顔がアップで映り込むカットも同じだった。

シャアのテーマソング(颯爽たるシャア)が流れる中、味方であるはずのガンダムから襲撃を受け、連邦軍ガンキャノンを出撃させるが、ジオン軍のエースパイロットであるシャアの敵ではなく、ビームサーベルコクピットを貫かれ、あっけなくガンキャノンは仕留められる。シャアはこの時の戦いを歴史上初めてのMS戦と語っていた。

ガンダムを奪取したシャアは続けてコロニー内のドッキングベイに乗り込み、停泊していた強襲揚陸艦ペガサス(正史ではホワイトベースと呼ばれていた連邦軍の宇宙戦艦。その形状から木馬とあだ名される)のメインブリッジをビームサーベルで突き刺し、V作戦の中枢となる母艦の奪取にも成功する。

シャアはこの時、自らの成し得た功績に対してこう言っている。

君らの船もいただいていく。運がなかったな
それとも私の運がよかったのかな
いや、あの時のひらめきが全てを変えた気がする

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

あの時のひらめきという発言。

そもそもシャアが出撃することになった理由はジーンのザクが故障したからだとドレンから語られていた。これがもし世界線の歪みにより生じた何らかの突発的な故障であれば、母艦に積まれていたMSの頭数から鑑みてシャア自ら出撃するのは必然だが、それをあの時のひらめきと表現するのはいささか不自然に思える。

これを踏まえると、正史にはなかったこの不可思議な出来事はあらかじめシャアによって仕組まれていた可能性が考えられる。

ちなみにこの世界線では、サイド7でアムロガンダムに搭乗して戦っていないのでコロニーが傷ついて穴が空くことはなく、宇宙へ放り出されるはずのアムロの父テム・レイも(作中での描写は無かったが)おそらく無事だと思われる。


この時点で思ったことは
これはガンダムシリーズ宇宙世紀(正史における本筋の時系列。それ以外の外伝作品群はアナザーと呼ばれる)のIFなのか?
あれ、ジークアクスはどこ?ガンダムのメカデザが違いすぎる、
といった具合に頭の中で情報が完結せず、いつまでも開いた口がふさがらなかった。

 


そしてシャアは強奪したガンダムと木馬を連れてサイド7からの脱出を試みるが、出航して間もなくドレンより接近中のMS 2機とサラミス級(連邦軍の別タイプの戦艦)の艦影を察知したという情報を受け、ワッケインにしては対応が早すぎると呟いている。

ワッケイン地球連邦軍の宇宙拠点ルナツーの司令官。ルナツーはサイド7近辺に位置する地球連邦軍の第2の月と称される要塞基地(ルナⅡとも言う)。


シャアはMSの迎撃には私が出ると意気込み、その際にガンダムの機体が白く目立つ色をしていることからこの機体が最初から囮を目的としていることに勘づく。

シャアが会敵したMSは連邦軍に鹵獲されたザクとゼロヒトガンダムと呼ばれる聞き慣れない機体。これはガンダムコクピット内のモニターにゼロヒトガンダムが映り込んだ際に『RX-78-01』の型式番号が表示されていたため、この世界線におけるプロトタイプガンダムだと思われる。

シャアはとりあえずビームライフルの試射にザクを撃ち抜くと、(敵側だった正史と同様に)一撃で破壊したその威力にドン引きする。

MSに戦艦並みのビーム砲とはな…

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

また、その戦闘の最中にゼロヒトガンダムが放ったバズーカの弾が実は木馬を狙ったものであり、そのことに気づいたシャアが木馬に着弾する前にビームライフルで弾を撃ち抜くシーンがあるが、実は正史でのアムロも同じことをやってのけている。

同一の性能を誇るゼロヒトガンダムにやや苦戦するが、シャアはビームサーベル同士のつばぜり合いに持ち込み、2本目のビームサーベルを取り出して斬りつけるという慣熟訓練中のパイロット相手に若干卑怯な手で見事に勝利を収める。

正史であればサイド7を離れたアムロをはじめとするホワイトベース隊の行く手をシャアを筆頭にジオンが追撃を仕掛けるといった構図の歴史だったが、この一連の出来事によってシャアが乗るガンダムとその母艦が新たな歴史の中心へと変わっていった。


鹵獲した機体をソロモン(小惑星を改装したジオン軍の拠点)に持ち帰った後、シャアがキシリア(ザビ家の長女。ジオン公国軍突撃機動軍司令)配下のマリガンと巡航船に乗りながら会話するシーンに移る。(この時の会話でシャアが大佐に昇格していることがわかる)

シャアとの会話の中でマリガンはこのような発言している。

ジオニックの新型は開発を中止

ガンダムの量産計画が決済されました

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

ジオニック社はジオン公国に本社を置く宇宙世紀史上で初めてMS開発した企業。正史ではジオニック社のゲルググとツィマッド社のギャンという新型機体のどちらを今後量産していくかといった開発競争を2社で繰り広げ、結果的にゲルググが選ばれている。

この件に関してドズル(ザビ家の三男。宇宙攻撃軍総司令官)は反対していたが、キシリアが説得したとの事。

更にここで、さらっとガルマ(ザビ家の末弟。地球方面軍司令官)が軍を離れたことが明かされる。

正史でのガルマはジオン反対派の父を持つ令嬢イセリナエッシェンバッハと恋仲にあり、木馬を討ち取り連邦軍の機密を手に入れることで、婚約を認めて貰おうとしていたが、もしその願いが聞き届けられなかった場合はジオンからの脱隊も視野に入れていた。しかし、その後シャアの謀略によりガウ(ガルマが乗っていた空母)が木馬に背後を取られ、ガルマは集中砲火を受けて戦死する。
ジークアクス世界線では連邦の機密は既にシャアに根こそぎ取られ、生き残ったガルマは大した戦果を挙げることもなくイセリナと添い遂げる道を選んだのだろう。

また、ガンダムシャア専用の識別色である赤色に塗装され、鹵獲した戦艦はソドンと改名された後、ムサイ(ジオン軍の戦艦)と同様にグリーンカラーに塗装された。

ソドンという名称は正史では元々、この時のシーンでシャアとマリガンが乗っていたような巡航船に付けられていた名前だが、この世界線では鹵獲したペガサスに付けられいる。(そのためこの巡航船の名称は不明)

続けてマリガンはこのソドンとガンダムグラナダ(月面にあるジオンの重要拠点)に届けてほしいとシャアに協力を請う。

いま先手を打たねば手遅れになりかねません
キシリア様には遠大な計画がおありのようで
シャア大佐には何としても協力をお願いしたい

一月で終わるはずの戦争が既に9ヶ月です

大佐の活躍で速やかに終わらせてください

もし大佐が特別な人でおありなら…

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

※因みにこの時、ガンダムの塗装を指示していたのはキシリアだということが明かされている。


そして場面が移り変わり、とある研究所のような施設でシャアが資料を読みあげる。

その資料には『シャア・アズナブルにおけるニュータイプの発生形態』と書かれていた。

キシリア閣下に挙げるはずの報告書のコピーをなぜ私に見せるのかとシャアは白衣を着た人物に問う。

その人物はフラナガン博士というニュータイプについて研究しているフラナガン機関の設立者。ニュータイプとはジオン・ズム・ダイクンが提唱した人類の革新と称される者達。勘が鋭く、ニュータイプ同士であればテレパシーで通じ合うことができるなど作中における超能力者のような存在に位置付けられる。

フラナガン博士はシャアの初めて搭乗したMSをいとも簡単に操ってみせたセンス、ビームを回避する超人的な反応速度などはニュータイプでないと説明が付かないと述べこう続けた。

人の革新が本当にあるのならそれを見届けたい

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

この報告書は正史では『シャリア・ブルに関するニュータイプの発生形態』といった題目で別人の資料であり、シャアを取り上げるような内容ではなかった。また、キシリアだけではなくギレン(ザビ家の長男。ジオン公国総帥)にも挙げられていた報告書だった。

そしてフラナガン博士は最後のカットで不敵な笑み見せる。

 

再び場面が移り変わり、艦橋でシャアは同じニュータイプであるシャリア・ブルと顔を合わせる。

シャリア・ブル大尉
優れたニュータイプ能力者として正史では第39話『ニュータイプ、シャリア・ブル』にて登場。
シムス中尉と共にニュータイプ専用モビルアーマー(MAと略されるMSに類する局地戦用兵器。その大半が大型で人型とは異なる外観をしている)のブラウ・ブロに搭乗しガンダムを駆るアムロと交戦するが、オールレンジ攻撃(ビットと呼ばれるニュータイプが発する脳波によって制御できる無人攻撃機を用いて相手の死角も含めたあらゆる射程(レンジ)から行う攻撃)をかわされ、最期はシムス中尉に逃げるよう呼び掛けるが脱出する前にガンダムの放ったビームライフルによって撃墜され共に戦死する。
木星帰りの男と称される彼は木星船団公社の船団隊長を務めていた。
木星船団は連邦とジオンのどちらにも属さない中立の組織であり、地球圏と木星圏の間(約5億km)を片道2年、計4年の歳月をかけて往復し、ヘリウム3を地球圏へと輸送している。
宇宙世紀ではほぼ全ての機体に動力部となる熱核反応炉が搭載されており、そのエネルギー源になるのがヘリウム3である。
このため、木星船団が機能しなくては全陣営がMSはおろか戦艦すら稼働できず、宇宙世紀のあらゆる物語が成り立たなくなってしまうほどに重要な資源とされている。
※ヘリウム3は現実にも存在しており、木星の大気に多く含まれ、核融合に適しているといわれている。

ジークアクス世界線での登場により、正史ではたった1話で退場した影の薄かったキャラクターが令和の最新作でスポットライトを浴びる存在へと昇格を果たした。

もともと出番が少なかったのはアニメ放送の打ち切りのせいであり、正史での見た目はかなり老けていたが『機動戦士ガンダム』原作者での富野由悠季氏が書いた小説版で明かされている年齢はなんと28歳。それほど木星での任務は過酷だったということがうかがえる。


シャリアは現時点での戦況をシャアに報告し、そこでドズルが戦死していたことを告げる。

正史でのドズルは、ソロモン攻略戦にて地球連邦軍との熾烈な戦いを繰り広げ、刻々と悪化する戦局に対してもはや覆せないことを悟り、妻子の脱出とジオン軍の残存兵力が撤退する時間を稼ぐ為、搭乗したMAビグ・ザムに単身で戦場に残り最期まで戦い抜くが、ホワイトベース隊のスレッガー・ロウ中尉の特攻とアムロの駆るガンダムの手により撃破される。(逃げ延びた彼の娘が後に『機動戦士ガンダムUC』で活躍するのはまた別のお話)

 

その後、地球連邦軍に占領されたソロモンはコンペイトウと名付けられ、連邦軍の重要拠点となった。

作中でその勇姿を見ることは叶わなかったが、世界線が変われどドズルの運命は変わらなかった。恐らく尺の都合だろうが、彼の悲劇はこの会話内だけで処理されている。

正史同様ソロモンが陥落し、戦況は芳しくない。

このままでは本土決戦も時間の問題とシャリアは口にするが、ジオンが勝つ方法はあるとシャアは断言する。

その具体案としてシャリアが以上の2点を挙げる。
しかし、シャアの言う勝つ方法とはそのどちらでもなかった。

次の場面ではシャアが格納庫でシャリア・ブルに赤いガンダムを見せているシーンに変わる。

計画中の専用MAに搭載予定だった試作アルファ型のサイコミュを無理を言ってガンダムに詰め込んでもらったとシャアは語る。

サイコミュとは人の認知能力を拡大し、ミノフスキー粒子下でも無線による情報通信を可能にする新たなシステム。

ミノフスキー粒子とはガンダムシリーズで登場する広範囲に電波障害を引き起こす粒子のこと。この粒子を大量に散布することで、電波障害を起こして無線機やレーダー等の電子機器を無力化する。

そのためシリーズ含めた作中では、この粒子のせいで戦場での長距離索敵が不可能という設定になっていることから、MSによる有視界戦闘(白兵戦)の必要性に説得力を持たせている。

※このサイコミュを介して直接反応するビットによる戦術が先述した、オールレンジ攻撃である。


戦局を左右する未知のテクノロジーだが、まだ実用テストはできておらず、シャアは同じニュータイプであるシャリア・ブルにその手伝いを任せようとしていた。

シャリア・ブルは自身の能力をただ勘が良いだけと軽んじるが、シャアはこう答える。

そうかな
君ならできる私の勘だ

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ


その後シャリア・ブルはシャアの個室に招かれ、彼の手元には年代物のワインが置かれていた。

ギレン総帥に何か含まされてきたのだろう?
はい、大佐のように上手くは立ち回れません
そういう君の不幸は理解しているつもりだ
貴公が総帥とキシリア閣下の間で

苦悩する必要がなくなるいい方法がある

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

2人のこの会話は、正史の第39話でシャリア・ブルの戦死後にシャアが言った「彼はギレン様とキシリア様の間で器用に立ち回れぬ自分を知っていた不幸な男だ」というセリフそのもののオマージュだと思われる。

シャアの言ういい方法とは何なのか、シャリア・ブルが尋ねる。

それは私と組むことだ。シャリア・ブル大尉

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

この直後、シャリア・ブルは明らかにときめいたような仕草をしており、シャアに心を掴まれた様子が見て取れる。
そしてシャアはこう続ける。

ニュータイプ全体の平和のために
ひいては人類全体のためにと言っておこうか

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

ここも正史の第39話においてシャアがニュータイプの少女ララァ・スンと交わした

「もし、我々がニュータイプならニュータイプ全体の平和のために案ずるのです」
「人類全体のためにという意味で取っていいのかな」

というセリフを模しているように思える。

シャアはシャリア・ブルのことを友人と呼び、2人は新しき時代を祝して静かに握手を交わした。

この会話の後からシャリア・ブルはシャアと組むことになるのだが、正史でのセリフを聞いた上でシャアの発言に注目してみると、シャリア・ブルと相棒を組むことでまるでこれから起こるであろう彼の悲劇をシャアが防ごうとしているようにも捉えられる。

木馬を奪取した際の「あの時のひらめき」でも感じられた違和感のように本作のシャアはもしかしたら何らかの方法で正史で起こった出来事をある程度知っているのかもしない。


その後、連邦軍によって占拠されたコンペイトウ(ソロモン)を奪還するためにシャアはビットを搭載した赤いガンダムで、シャリア・ブルはドム(MS)で出撃する。

2人はコンペイトウから遠く離れた宙域の岩礁帯に身を潜め、敵艦に照準を合わせると、シャアがニュータイプ特有の額から閃光を発する演出と共に複数のビットを操作し、コンペイトウ付近に停泊している連邦軍の艦隊に向けて狙撃する。

このビットによる超長距離射撃をシャアは軽々とこなしていたが、正史ではこの時点ではまだサイコミュの小型化はできておらず、ビットはMAに搭載されるような代物だった。さらにララァがMAエルメスに搭乗してこの場面と同様にビットを操作した際は身体にかなりの負荷がかかっていた。※この出来事がきっかけでララァは連邦からソロモンの亡霊と呼ばれ恐れられる。

ジークアクス世界線のシャアはなぜ
何の負担も無くビットを操れていたのか…

狙撃地点が捕捉できず、為す術もない連邦軍の艦隊は次々と撃破されていき、シャアはソロモンの奪還に成功する。

その様子を見ていたキシリアは大層驚き、サイコミュは戦局の切り札ともなり得る兵器だと賞賛すると同時にサイコミュの実戦投入を急がせるが、さしあたって今後ギレンの存在がこの計画の障害となり得る現状に顔を曇らせる。

総帥の唱える人の革新は口先ばかり

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

この言葉からも彼女がギレンと対立していることがうかがえる。

その後、ルナツー攻略戦にてマ・クベ(キシリア配下のジオン公国突撃機動軍大佐)が指揮する部隊がワッケインの艦隊と交戦するシーンに変わり、マ・クベがこう発言する。

最初からビグザム一個戦隊を投入しておけばあと3日早く落とせたのだ

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

これは正史でドズルがソロモン攻略戦の際に言い放った「ビグ・ザムが量産の暁には連邦などあっという間に叩いてみせるわ!」というセリフを実際に作中で再現させたようだ。

ちなみにマ・クベキシリアへの忠誠心が高く、彼女に気に入られているシャアのことを快く思っておらず、強い対抗心を抱いている。

マ・クベの副官であるウラガンもそのことを察しているようでこの後の会話で彼の心境を聞き出そうとしている。

(ビグ・ザムで戦果を挙げることに対して)しかし、それではMAの量産を推し進めていたギレンに借りを作ることになるとウラガンが反論。

それに対してあくまで実利を優先しているのだとマ・クベが述べる。

ウラガンはそれではシャアをこの作戦をから外したことは実利に反するのではないかと彼の心情の矛盾を的確に指摘し、最終的に(私が)嫉妬心(を抱いている)とでも言うのかとマ・クベに言わしめている。

そんな彼らの茶番に割って入るように部下の一人がマ・クベに告げ口する。

なに…ソロモンが?!

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

マ・クベが驚愕した直後、連邦軍の艦隊に包囲されているソロモン(コンペイトウ)が映し出される。

実はマ・クベが戦っていたルナツーにはワッケインはおらず、ルナツー攻略戦そのものが、彼によるマ・クベの艦隊を引き付けておくための囮作戦だった。

前半パートも佳境に入り、
逆シャアで聞いたことのある展開になってきた。


ワッケインの真の目的、それは作中の冒頭、正史の第1話でもナレーションによって語られていたジオン軍が行ったコロニー落としを模倣した強攻策であり、追い込まれた連邦軍がジオンの重要拠点であるグラナダ月面基地に向け小惑星ソロモンを衝突させようとしていた。

コロニー落とし核兵器の直撃にも耐えうる岩盤に守られた地球連邦軍総司令部ジャブローを破壊するために行われた作戦だが、落下する最中に軌道が大きく外れ、結果的にコロニーはオーストラリア大陸に落着した。

連邦軍はソロモンに核パルスエンジン(推進力を生み出す装置、スラスター)を装着する。

ジオン軍はほぼすべての戦力をルナツー攻略戦に割いていたため唯一温存していた戦力であるシャアの部隊だけでソロモンを阻止しなければならなかった。

グラナダで指揮していたキシリアはこの部隊をたった4隻の殴り込み艦隊と称し、ジオンの命運を赤い彗星に委ねた。

頼むぞキャスバル坊や

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

機動戦士ガンダム THE ORIGIN』によるとキシリア曰くシャアとは幼い頃に遊んであげていた間柄であり、彼がキャスバルであることを知りながら懐刀として麾下に置いていた。これは一年戦争後に起こるであろう対立するギレンとの政争を踏まえた計画としてジオンの遺児である彼を味方に引き入れようとしていたようだ。

ソロモン防衛作戦の任を受けたシャアの策は
ソドンをソロモンへ揚陸し制圧、その後無人のザクを爆発させソロモン内部の主動力炉を破砕。ソロモンの一部を破断することで落下の軌道をグラナダからそらすといったもの。部下達に作戦内容を告げたシャアは最後にこう締めた。

この船はジオン唯一の強襲揚陸艦
それを正しく使う以外他に手はない

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

出撃を前に、シャアの早すぎる作戦立案に対してシャリア・ブルは事前に自身で思索していたのではないかと問う。

シャリア・ブルの言う通りシャアは一年戦争勝利後、ザビ家を相手取るためにジオンの重要拠点であるソロモンの攻略方法をあらかじめ考えていたことを明かす。

シャア・アズナブル

機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 公式サイト

シャアは、ジオン共和国創始者ジオン・ズム・ダイクンの子、『キャスバル・レム・ダイクン』として生を受ける。
※後に妹である『アルテイシア・ソム・ダイクン』も生まれる。
U.C.0068年、父・ジオンが志半ばに病死。彼の死の真相については明らかにされていないが、当時対立していたデギン・ソド・ザビによる暗殺と噂されていた。ジオンの死後、後継として政権を掌握したデギンは公国宣言を経て初代公王に就任。キャスバルアルテイシアの兄妹はザビ家により迫害を受け、キャスバルデギンによる暗殺説を深く信じ、ザビ家への復讐を目的に経歴を偽ってジオン軍に入隊する。
※一説には臨終の際にデギンを指差した事が「後継者を指名した」という解釈と「暗殺者を告発した」という解釈に分かれている状況にあるという。


出撃前の会話のやり取りから、シャアはザビ家への復讐に身を投じている自身の身の上をシャリア・ブルに直接、あるいはニュータイプの能力を通じて密かに伝えていたことがうかがえる。

部隊はソロモンへ向かい、連邦軍護衛艦隊を打ち破り、ソロモン内部への侵入を試みる。

大尉と私で血路を開くぞ

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

この戦いで赤いガンダムが操るビットの推進剤が切れるが、どのみちソロモンの中では使えないためシャアはビットを連邦の艦隊にぶつけてもろとも破壊する。(この時点でビットは残り2機となる)

ソドンの艦首でソロモンの外壁を突き破り、シャアは自爆用の無人ザクを運ぶMS部隊を内部に送り込む。

シャリア・ブルはMAのキケロガで出撃しているため、後のソロモン内部での作戦をシャアに任せる。

そしてシャアは目的地点で部下に無人のザクを設置させた後、部下を他の地点の援護に回るよう指示しその場に残るが、ここで連邦とザビ家の共倒れを目論む。

結果的に連邦が倒れ、更にはジオン全体の疲弊を招くこの作戦が自身にとっても都合が良いと判断したのか、シャアは設置していたザクを撤去し連邦の策を利用することにした。

そこでシャアは坑道内で待ち構えていた連邦軍の白の軽キャノンと対峙する。
ここでシャアによって語られているが、ドズルを討ったのはこの軽キャノンの仕業だった。

その機体はかつてのガンダムのようにトリコロールカラーで塗装され、手に持ったガンダムハンマーと思われる武装を使いこなす。

シャア曰く軽キャノンのパイロットはニュータイプであることが明かされており、狭いソロモンの内部でシャアは僅かに苦戦を強いられるが、それでも彼が乗るガンダムの敵ではなかった。

シャアが軽キャノンにとどめを刺そうとした瞬間、彼からニュータイプの閃光が走り、軽キャノンに搭乗しているパイロットの正体が彼の実の妹であるアルテイシアだと気づく。
正史での彼女はセイラ・マスと名を偽りホワイトベース隊のクルーとして連邦軍に所属していた。その際、MSのシミュレーターで好成績を収めていたためニュータイプの才能はあったものと思われる。ジークアクス世界線ではアムロのかわりにその能力を発揮していたのだろう。

アルテイシアか?!

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

 

シャアがその事実に驚いていたのも束の間、とっさの隙を突き軽キャノンが放った砲撃が坑道内の岩盤を崩落させシャアが内部に閉じ込められる。

そして作戦は時間切れとなり、シャアを残してソドンがソロモンから離れる。

それを見たシャリアが大佐はまだ戻られていないのかと声を荒げる。

ソロモン内にいたシャアは赤いガンダムの異変に気づき、サイコミュが謎の反応を示して発光する。

その後、赤いガンダムを中心にソロモンの一部が淡いピンク色の光に包まれる。

突如起こったサイコミュの暴走にシャアは尋ねた。

一体、誰の精神に反応しているのだ

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

グラナダからそれを見ていたキシリアはこれを赤い彗星が引き起こしているのかと仰天し、直後に彼女の側近からこう言い渡される。

地下の実験場で例のオブジェクトが消失した

これもシャロンの薔薇のしわざか、とキシリアは呟いた。

 

「ラ、ラー」

この時、シャリア・ブルは不思議な声を聞いていた。

その声はどうやらサイコミュを通じて聞こえているらしく

無線からはシャアの声がする。

何者なのだお前は
向こう側から来たというのか

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

シャリア・ブルが必死に呼びかけるがシャアからの返答はない。

なんということだ

刻が、見える…

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

それがシャアの最後の通信だった。
ピンク色の光とともにソロモンの一部が消滅、それによりソロモンの軌道がずれグラナダへの衝突は免れる。

その後、ソロモンは淡い緑色の光を漂わせながら宇宙の彼方へと去っていった。

この出来事は逆シャアアクシズショックを踏襲したような結末だった。

U.C.0093年に繰り広げられたアムロとシャアの最後の戦い『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で描かれた第二次ネオ・ジオン抗争ではシャアは新生ネオ・ジオンを名乗り、小惑星アクシズを地球へ落下させるべく立ち回ったが、結果的に人の心の光によってアクシズ落下は阻止され、アムロとシャアは消息を絶った。(この出来事が後にアクシズショックと呼ばれ語り継がれる)

その際、νガンダムアクシズを押し返そうとしたアムロは不思議な光に包まれるが、それはジークアクス世界線でのソロモンと同じ緑色の光だった。そしてその結果、小惑星の落下が防がれるという結末までも酷似している。

しかし、U.C.0079年の時点ではνガンダムに搭載されていたサイコフレームはまだ開発されておらず(U.C.0090年頃の技術)、なぜアクシズショックのような奇跡が起こったのかは作中で明らかにされていない。

フラナガン博士はアルファサイコミュに一体何を仕掛けたのか。そしてシャロンの薔薇とは何だったのか…

後にゼクノヴァと名付けられたこのサイコミュの暴走事故によって赤いガンダムと共にシャアは行方不明となる。

その後、宇宙での重要拠点であるルナツーとソロモンを失った地球連邦政府は戦争継続を断念しジオン公国に対して休戦を申し入れる。

U.C.0080年 1月3日。1年に渡るジオン独立戦争は地球連邦の完全撤退という形で終結を迎え、シャリア・ブルは事の顛末をこう締めくくっている。

戦争は終わったが
大佐はソロモンの輝きとともに消えたままだ
以来、私はロストした赤いガンダムを追い続けている

あの時あなたは何を見たのですかシャア大佐
大佐を乗せたままどこへ消えたのですか赤いガンダム

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

 

 

 

ここまでは『機動戦士ガンダム GQuuuuuuX』の前日譚『-Beginning-』として描かれ、ここからジークアクスの本編が始まる。

劇場のパンフレットによると庵野氏は以前より
赤いガンダムに乗るシャアが主人公の物語を描きたがっていたようで、そういった経緯で庵野氏がジークアクス前半部分(Beginning)の脚本を担当することになったそうだが、あっという間に映画1本分作れそうな脚本並みのディテールが盛り込まれたプロットが挙がってきたらしく、映画の尺に合わせるために相当な量が削られているという。

そして庵野氏は逆シャアの同人本を書いていた経歴がある。

1993年に刊行された『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会』

エヴァンゲリオン』シリーズや『シン・ゴジラ』などの監督・総監督として知られる庵野秀明氏が責任編集を担当している本書は『機動戦士ガンダム』の原作者である富野由悠季氏をはじめとする錚々たる顔ぶれへのインタビュー記事を通じて『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を検証・総括することを目的として制作された同人誌となっており、さまざまな角度から逆シャアについて語られている。

そして本書のもうひとつの主題が庵野氏が抱える当時のアニメに対する焦燥と憤り。1993年当時、アニメファンの興味は既にリアルロボットものから離れており、ガンダムシリーズの主力商品もSDガンダムへと移っていた。シリアスな戦争を扱ったロボットアニメには逆風が吹いていた時代。そんな中、『逆シャア』は公開から数年後には世間から忘れ去られた作品となったことに庵野氏は鬱屈し、アニメ制作業界に失望していた。そんな忘れられた傑作の価値をもう一度検証し、世間に対して知らしめるために生まれたのがこの逆シャア本であり、そしてこの同人誌の編集・執筆の中でかろうじて萎えた感情を奮い立たせたことがのちに『新世紀エヴァンゲリオン』へと繋がったという。この本がなければエヴァもなかった。ファンの間では幻の同人誌と囁かれている一冊だ。
※ちなみにこの本は株式会社カラーによって復刻されている。

 

 

GQuuuuuuX本編

一年戦争末期、ゼクノヴァの発生によってシャアと共に行方知れずとなっていたはずの赤いガンダムだが、その5年後のU.C.0085年にサイド6『イズマ・コロニー』の周辺に度々出没するようになった。

赤いガンダムはコロニー外壁に謎のグラフィティを描いて回っているほか、当地で行われる『クランバトル』にもその姿を見せており、軍警に対応の手を焼かせている。


サイド6『イズマ・コロニー』は一年戦争時に中立を表明しており、ジオン公国と地球連邦のどちらの戦争行為にも加担しないという中立的立場を維持し続けたことで戦火を免れている。
当コロニーでは戦後、民間に払い下げられたモビルスーツを使った非合法な賭け試合『クランバトル』が行われている。

また、サイド6では日本語が公用語に採用されているらしく、劇中では地下鉄の路線案内図や道路交通案内図といった様々な箇所が日本語で表記されている。

そしてサイド6と言えば『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』の舞台でもあり、その主人公『アルフレッド・イズルハ』は日系人のような名前をしている。
ほかにもビルの上に建てられた神社や路線の駅名で出ていた貧民街にネノクニ(日本神話で死後の国)と名付けられていることなどからイズマ・コロニーの由来は出雲から来ている可能性がある(主人公アマテ・ユズリハ天照大神からだと思われる)。

※実際、サイド6は戦後の日本をモデルにしていると監督の鶴巻氏は語っていた。
※正史によるとジオン軍フラナガン機関もここにあるらしい。


ジークアクスの舞台は戦後だ。表向きでは既に戦争は終わっているが、シャアの行方、『シャロンの薔薇』や『ゼクノヴァ』といったエヴァンゲリオン譲りの謎は残されつつも、時代は移り変わっていく。

 


ソドンの航路ふさぐジャンク業者の2機のザク。
そのMSは武器が使えないようにインストーラーデバイスが外されている。
民間に払い下げられたMSは連邦軍の敗残兵への食い扶持斡旋のためであり、戦勝国の義務だとシャリア・ブルは語る。

この時ソドンのクルー達との会話からシャリア・ブルはジオン公国軍中佐に昇格していることが分かる。


一方、サイド6のとある駅の改札で警察から追われている少女とぶつかった主人公『アマテ・ユズリハ』はその拍子に非合法の密輸品であるMSのインストーラーデバイスを手にする。

紛れもなくこれがマチュの運命を変える決定的瞬間となった訳だが、この場面を米津玄師氏が歌う主題歌『Plazma』の歌詞になぞらえると、マチュ以外の別の人物の視点で作られた楽曲のようにも聞こえてくる。

もしもあの改札の前で 立ち止まらず歩いていれば

君の顔も知らずのまま 幸せに生きていただろうか


もしも不意に出たあの声を きつく飲み込んでいれば

「Plazma」作詞・作曲:米津玄師

本来ならプラズマの綴りはPlasmaだが、あえてsをzにしているところも含めて気になる点は多々あるが、筆者の制作時間の都合上、そこは割愛としたい。詳しくは『Plazmaシリーズ』で検索してみてほしい。


インストーラーデバイスはMSが武器を扱えるようにするための部品でジオン公国一年戦争に勝利した後、民間に払い下げらたMSはインストーラーデバイスを外されているため武器が使用できず、闇取引き等で違法に入手した者たちがクランバトルに参加している。

バイスの形状はアムロの父である地球連邦軍技術士テム・レイが制作していた回路に酷似しており、正史で彼はサイド7にてアムロが搭乗したガンダムザクIIを撃墜した際にコロニーの外壁に空いた穴から宇宙に投げ出されたことで酸素欠乏症となり、後にアムロと再会した際には後遺症の影響で精神が破綻してしまっていた。

テム・レイ本人はその回路をガンダムの記録回路に取り付ける事で戦闘力が数倍に跳ね上がると謳っていたが、アムロはそれが既に型遅れの旧式であると見ぬきテムと別れた直後、地面に叩きつけて捨てている。

ジークアクス本編で登場したインストーラーデバイスが例の回路とあれだけデザインを似せておいてテム・レイと何も関わりがないとは考えにくい。


そしてデバイスを巡ってマチュがニャアンを追いつめるシーンでNOMELON NOLEMONの『ミッドナイト・リフレクション』が流れる。

この曲の存在により、BeginningとGQuuuuuuXの時代が明確に変わった瞬間を感じられた。
令和のシティ・ポップのような雰囲気と疾走感のある曲調なのだが、冒頭部分の歌詞からは脳裏に焼き付いた『彼』を探し続けるシャリア・ブルの心境を歌っているようにも感じ取れる。


「ミッドナイト・リフレクション」NOMELON NOLEMON

 

人物と小ネタ

以降は登場人物や用語の小ネタなどをまとめている。

 

機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 公式サイト

マチュ

ユズリハ花言葉は『世代交代』
春先に新葉が出ると前年の古い葉が落ちることから、新旧の世代が交代して絶えることなく続いていくという縁起の良い植物。
葉の世代交代がはっきりしていて「譲る葉っぱ」から転じて「ユズリハ」と呼ばれるようになり、代をゆずる樹として子孫繁栄の縁起も担いでいる。

そしてシュウジと参加したクランバトルではニュータイプ特有の閃光を走らせるだけでなく、シュウジと深く感応してゼクノヴァを発現させかけたため、ニュータイプとしては非常に高い資質を秘めていると思われる。

しかもアムロですらマニュアルを読んでやっとガンダムを操作出来たというのにサイコミュ操作とは言え、そこそこ経験があるはずのクランバトル対戦相手の機銃弾道を避けきってみせる脅威の回避能力など彼女が持つニュータイプの資質は破格と言わざるを得ない。もっとも、マチュ自身の運動能力はかなり高い方なので(逆立ちでプールに高飛び込み、機体を乗り換える際にみせたパルクールなど)サイコミュさえ起動出来れば、ジークアクスを自身の体のように操作することは容易なのだろう。

ちなみに宇宙世紀やアナザーの主人公たちは(外伝作品を除き)シミュレーターやモビルワーカー(作業用機)など何らかの形式でMS操縦の基礎があるのだが、マチュは今の所そういった操縦経験を見せていない。

意外かもしれないが、アナザー含めてもモビルスーツの操縦経験が全く無い状態で初戦闘を行った主人公はマチュ以外だとアムロだけである。そのアムロも機械いじりを趣味にしていたため、すぐガンダムに馴染めたが、マチュはそこまでメカに強い描写がないのも異端さに拍車をかけている。

※因みに関係ないと思われるが、本予告PVの公開日1月10日はハマーン・カーン(『機動戦士Ζガンダム』やその続編などに登場する人物)の誕生日であり、劇場公開日の1月17日は彼女の命日である。


『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)-Beginning-』本予告

 

機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 公式サイト

ニャアン

公式サイトの紹介文を見てみるとマチュとは正反対な境遇だということが分かる。また、プチ・モビルスーツを操縦できるのであれば今後も何かしらの機体に搭乗する機会があるのではないだろうか。しかも幼いながらにMSを操縦していたのであれば、ニュータイプの素質がある可能性も考えられる。

因みに闇バイトの合言葉として使われていた「こんにちは、お急ぎですか?」というセリフは正史の第27話『女スパイ潜入!』においてジオン軍の女スパイであるミハルが待ち合わせ場所で工作員との合図に使っていた。

 

機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 公式サイト

シュウジ・イトウ
公式サイトに書かれている『ある目的のため』とは何なのか。
シュウジはマチュと一緒に参加したクランバトルで、相手が使用してきた閃光弾により気が動転したマチュを落ち着かせるためにこう発言している。

焦らないで、マチュ
もっと自由になっていい
海を泳ぐ魚みたいに

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

 

海の解像度が高く、まるで地球を知っているかのような発言。このことからシュウジの目的は故郷である地球に帰ることなのではないかと考えられる。

また、本編上映後の特別映像にてシャロンの薔薇が地球にあるという事実をシュウジは赤いガンダムを通じて話していた。

そしてマチュとニャアンを隠れ家に連れて来るシーンで赤いガンダムが格納されている空間にスペースランチ(軍用の艦船搭載ボート、小型艇)が映っており、その内部を居住スペースにしていることがうかがえる。

シュウジジークアクスに搭乗したエグザべ少尉と互角に渡り合い、ビットを使いこなしていることからニュータイプとしての素養があり、戦闘訓練を受けている人物と考えられる。そのためニュータイプ研究所のような施設に所属していた可能性があり、スペースランチを使ってその研究施設から脱出してきたのではないだろうか。

更にシュウジはよく「~とガンダムは言っている」と発言する。汎用性のあるこの言葉だが、まるでガンダムに意思が存在しているかのような物言いである。

もしかしたら『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』のEXAMシステムや『機動戦士ガンダムNT』のフェネクスのように赤いガンダムにも誰かしらの意識が埋め込まれているのかもしれない。某エヴァもそうだったが、嫌な予感しかしないのは筆者だけだろうか。

それとクランバトルではソロモンでシャアと交戦していた白の軽キャノンが持っていたであろうガンダムハンマーを装備して参加しているため軽キャノンもゼクノヴァに巻き込まれていた可能性がある。


そしてもし、イズマ(出雲)コロニー繋がりで日本神話に関わりがあるのだとすれば、この3人のモデルはアマテラス、ツクヨミスサノオということになり、彼らはイザナギの禊から生まれた三貴神をなぞらえる存在となり得るかもしれない。

因みに彼らが生まれるきっかけとなったイザナギの禊はそれぞれ

  • 左目アマテラス
  • 右目ツクヨミ
  • 鼻 スサノオ
     
    という風に清めた体の部位によって異なり、シュウジがマチュとニャアンの頭を嗅いでいた意味深(変態的)な行為は彼に該当するスサノオが禊を行ったイザナギの鼻から生まれたからであるならば合点がいく。

 

機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 公式サイト

エグザベ・オリベ
ジオン公国軍少尉。元ルウム(サイド5)の難民だったが、フラナガンスクールを首席で卒業しジオン公国軍に入隊。ニュータイプ能力があると目されており、作中でも確かにニュータイプ特有の額から閃光を発する描写が見受けられる。

フラナガンスクールと聞くと聞こえは良いが、ニュータイプ研究所であるフラナガン機関と関係がないとは思えない。そのため彼が強化人間ではないという可能性は拭いきれない。


カムラン・ブルーム
サイド6の大統領補佐官。正史ではサイド6の監察官をしていた民間人。ホワイトベースのクルーであるミライ・ヤシマのかつての婚約者であり、一年戦争の勃発によりミライとは生き別れていたが、サイド6にて再会。しかし戦争をどこか他人事のように捉えている彼の態度によってミライから愛想を尽かされる。

ミライは最終的にホワイトベースの艦長を務めたブライト・ノアと婚約し、彼との間に長男のハサウェイ、長女のチェーミンと2人の子を授かる。(長男は後に『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』にて主役として登場する)
劇場のパンフレットにはかつて婚約者がいたが、結婚には至らず破談に終わったと記載されていることから過程は違えど正史と同じ結末を辿ったことがうかがえる。

機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 公式サイト

アンキー
ジャンク屋・カネバン有限公司の社長。やたら厚化粧で社長とは言え難民にしては身なりが綺麗すぎたり、マチュと初めて出会った際に銃を隠し持っていたりするなど何かと秘密がありそうな人物。

マチュに渡したパイロットスーツも入場者特典第2弾として配布された『DESIGN WORKS』を見てみると、着脱可能な外付けパーツがありそうな見た目をしているため、何らかの隠された機能があるのかもしれない。

また、難民に対して酷い扱いをする軍警を見てジオンが戦争に勝ったってスペースノイドは自由になれないといった発言をしていたことから、大義を信じた末にジオンが勝利を収めたが、多くのスペースノイドが救われない現状に満足できていないような言い草に感じる。

更にはマチュがクランバトルに参加する際、あの子は間合いがわかってる、本物かもしれないと発言しており、ニュータイプについて何か知っているような素振りも見せている。

彼女が示すこれらの違和感から推察するに、アンキーの正体は正史におけるブラウ・ブロの開発者であるシムス中尉なのかもしれない。

彼女がいまだに現役でシャリア・ブルの部下だとしたら、工作員としてネノクニに潜み、ニュータイプの素質がある者を探すためにクランバトルを利用している可能性がある。ジークアクス世界線においてシャリア・ブルにこれだけスポットライトを照らしているのであれば、正史で彼の身近にいた既存キャラが登場してもおかしくはなく、アンキーが実はシムス中尉だったというのも単なる与太話ではなさそうに思える。

シャリア・ブルの目的はシャアを探すことのはずだが、ジオン軍の最高機密であるジークアクスを勝手に出撃させるだけでなく、オメガサイコミュを起動させようとしたり、無断でサイド6へ突入するなど明らかに反ジオン的な動きを取っている彼は目的のためなら手段を選ばず、シャアを探す方法として容易に思いつきやすい"同じ現象を起こしてみる"、つまりもう一度ゼクノヴァを発生させようとしているのではないだろうか。

そのために必要なのはジークアクスに搭乗しオメガサイコミュを起動できる特別なニュータイプであり、戦後の世界においてはクランバトル界隈で網を張っているのが一番遭遇率が良いと思われる。そう考えるとクランバトル開始時にバーのマスターを通じてシャリアにマチュの情報を流していた可能性もあり得る。

シャリア・ブルはジークアクスが何者かに奪われているにも関わらず、急いで取り戻そうとせずに軍警や敵対勢力でなければ構わないといった発言をしていることは不可解であり、マチュ達をあえて泳がせているようにも思える。

また、アンキーが社屋に保管していたジークアクスのコクピットに触れた際、マチュに「初めてなのによく動かせたね」と発言しているが、アンキーにニュータイプについての知見があることを踏まえるとこれは単に学生がMSを操縦できたことに対して言っているのではなく、ジークアクスに搭載されたオメガサイコミュを起動させたことに彼女自身が驚いて出た言葉なのではないだろうか。

それとバーでシャリアが赤いガンダムを見た時に言った台詞

あれは大佐ではないよ
大佐がMAVの先陣を他人に譲るわけが無い

引用元:機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-/© 創通・サンライズ

MAVとはそもそもシャアとシャリアが編み出し、突撃機動軍の教本に記されるほどこの世界においては知れ渡った戦術であり、作中でシャアが他のパイロットとMAVを組んでいた描写はない。故にこの言葉はシャリア視点の発言となるが、正史においてはシャアは部下に敵への接近を促したり、敵の背後に回って援護しろなどの前衛に出させるような指示を出したことによって結果的に部下を失う原因を作ってしまっていた。

反対にジークアクス世界線でのシャアは部下を前線から退かせ、MSの迎撃は私が出るといった発言をすることなどから、部下の生存率を上げるような立ち回りをしていた。先述したようにこれもシャアが正史での記憶を持っている裏付けになり得るかもしれない。

 

機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 公式サイト

gMS
GQuuuuuuXに付けられた型式番号。オメガ(Ω)はギリシャ文字の最後の字であり、究極を意味する。同じくギリシャ文字の最初の字を冠する赤いガンダムgMS-α』とは対を成す関係性になるのではなかろうか。

はじまりと終わりを結ぶ者(A-Z)
そういえばあの赤い人も英語の綴りは『Char "Az"nable』だった。

この新たな世界線で彼はアムロが乗るはずだったガンダムで功績を残し、後に開発されララァが乗るはずだったエルメスのビットを操り、機体を自身の識別色に変えた赤いガンダムで宇宙を駆けた。その姿はまさに三位一体。

もともとV作戦においてはガンダムに搭乗したアムロの戦闘データをジムに移植し戦争を有利に進める計画が盛り込まれていた。故にこの赤いガンダムの戦闘データも後継のジークアクスに引き継がれていてもおかしくはないだろう。

そしてジークアクスが他のMSとは決定的に異なる箇所がマチュがオメガサイコミュを起動させたシーンに描かれている。それはコクピットに現れる左右の操縦桿だ。

マチュからも語られていたようにその形状はまるで人の手のひらを模しており、どちらもニュータイプの素養がある人物であるにも関わらずエグザべ少尉ではなくマチュが搭乗した時だけオメガサイコミュのロックは解除された。

まるでジークアクスに誰かの思念が宿っているかのように。

Beginningの冒頭ではシャアがサイド7でガンダムと木馬を強奪していたが、その後サイド7の住民はどうなったのか、描写は描かれなかったが、結果的には一年戦争に巻き込まれた難民という立場になっていても不思議ではない。

本作のニュータイプは今までのガンダムシリーズのような悲劇的な扱いを受けることがなく、実際にシャアが出撃した戦場においてはジオン側の機体にあからさまな撃沈は見受けられず、ポジティブに優勢な戦闘のみが描かれていた。

しかし、それはあくまでジオン側の描写であり、ジオンがこの戦争で勝利をおさめたことにより、難民が受ける扱いは無残なものだった。サイド7に残った人々のその後については語られてはいないが、少なからず連邦の軍人は捕虜になっている可能性がある。

そしてもし捕虜の中にニュータイプの素養がある人物がいたとしたら戦時中においてこれを利用しない手はないだろう。ニュータイプ研究所のフラナガン博士は登場シーンのラストで不敵な笑みをこぼしていた。果たしてこれが意味するものとは何なのか。

一方で、ゼクノヴァによって赤いガンダムとともに消息不明になったシャア、シュウジの「〜とガンダムは言っている」という発言から推察するに赤いガンダムにはシャアの意識が入っている可能性も考えられなくはないが、仮にシャアでなくてもあの赤いガンダムには確実に何かしらの思念が埋め込まれているように思える。

もし、この三位一体とも言える機体の戦闘データにアムロニュータイプとしての感覚、容易にこなす卓越した回避能力のアシストが合わさればそれはまさにオメガの名に相応しいサイコミュ、そしてそれを搭載した機体は究極の兵器と言っても過言ではないだろう。

これからまだまだ発展の余地があるサイコミュシステムになぜΩの文字を付けているのか…


quuuuuuxについて
この不可思議な名前については、メタ構文変数が由来だという説がある。

これはプログラミングにおいて使われる識別子の一つであり、サンプル用のプログラムなどで利用される“意味のない仮名”のこと。その例は、1番目から順にfoo、bar、bazと続いていき、それでも足りない場合に4番目としてquxを付ける。以降はqとxの間のuを1つずつ増やしていき、quux、quuux、quuuuuxとなり、9番目がquuuuuuxになる。

ガンダムRX-78-8、つまり8号機まで設定が存在するが、Gquuuuuuxは未発表のガンダム9号機という位置付けになるのかもしれない。なお8号機は設定上のみ存在し、デザインは発表されていない。

それとあくまで仮説だが、カネバン有限公司の構成員らがマチュが持ち帰ったジークアクスの機体を調べている場面で、その名称はプレースホルダではないかと話していた。プレースホルダとは、後から値や文字を入力できるように一時的に確保しておく場所や記号、変数を指す。このことを踏まえて明らかに怪しい『u』の格納領域にサイコミュを搭載していたMSの機体名を入れてみると『GQubeleyX』となる可能性もあり得るが、真相は定かではないためTVシリーズの放送(答え合わせ)を待つしかないだろう。

 

世界線の変更点
作中では連邦軍はかつてのジオンと同じ手を使い、ジオンを道連れにしようとしていた。そこまで連邦軍が追い込まれた理由には連邦軍のMS量産計画に生じたスケジュールのずれが関係していると考えられる。

ホワイトベース隊が活躍していた正史ではアムロが乗るガンダムから白兵戦の戦闘データを補給部隊を通じて受け取り、連邦軍はそのデータを量産型MSジムに反映させ一年戦争中に約3800機以上を生産した。

しかしこの世界線での連邦はシャアによってガンダムを奪われ、それだけならまだしも、試作機であるゼロヒトガンダムも消失しており、残ったのはガンキャノンの戦闘データのみだった。

既にジムの初期生産はされていたが、白兵戦用に開発されていたのに白兵戦のデータがないという事態に陥り、MS量産計画の変更を余儀なくされた。その結果、連邦側に生まれたのが軽キャノンであり、ジオン側ではゲルググの代わりにジムに相当する機体の量産が決まったのだと考えられる。

劇中ではそのような機体は見かけなかったが、後に公開された映像『TV Series  Promotion Reel』ではジムに酷似した機体が登場している。


『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』TV Series Promotion Reel

劇場のパンフレットによればシャアが世界を改変したことによってシャリアが乗るはずだった機体がブラウ・ブロではなく一回り小型のキケロガになった(ブラウ・ブロ:62.4m、キケロガ:32.0m)等に加えて名称の変更がされている。

そもそもキケロガのデザインはアニメでは一切出てきてはおらず(Gジェネレーションなどのゲーム作品では登場しているが、作品によって見た目が異なっている)、原作者富野氏の構想(トミノメモ)に名称でしか登場してこなかった機体だった。

しかもMAであるブラウ・ブロが小型化しているということはこの世界線では明らかに正史より技術革新が進んでいると言える。

…更にそれはジークアクスの世界は正史よりもサイコミュの技術が発達しているという事も意味している。

正史の一年戦争におけるサイコミュはMAや大型のMSに搭載されていたシステムであり、赤いガンダムに似たコンセプトのネティクス(ジオン公国軍から接収したサイコミュ技術を用いて開発した機体)が登場したのは一年戦争後。実用レベルにまで小型化を果たすのはそこからさらに後のキュベレイまで待たねばならなかった。

それがジークアクスの世界では試作型の段階で(ビットこそ大型とはいえ)ガンダムに後付けで載せられる程に技術革新が起きており、さらにはゼクノヴァという不可解な現象まで引き起こしている。

この為、一部の視聴者からはジークアクスの世界では正史よりも技術レベルを推し進めた何かしらの要因があるのではないかと考察されている。


因みに庵野氏曰くシャアがガンダムに乗ったことで世界が改変されている為、名称も変えた方が良いという理由で全部ではな一部の機体名が変更されることで違和感を表現しているとのこと。
そういう経緯からホワイトベースは今回ペガサスといった名称でジオンの戦利艦にされたあとはソドンという名称に変更されているという。

 

シャロンの薔薇

作中でその真相が明らかになることはなかったシャロンの薔薇。

まずはシャロンの薔薇という単語について調べると
旧約聖書の雅歌にその名が出ており、どうやらそこから引用してきたもののようだ。

ちなみにこの雅歌は英語では『Song of Solomon』となり、ソロモン王が詠んだとされているため、このあたりも作中のソロモン落としに絡んで引用されていると思われる。

シャロンとはイスラエルにある地名を表しており、イスラエル近辺は基本的に荒れ地が多い土地だが、シャロンは例外で花や木々が生い茂る豊かで特別な場所だとされている。そして、シャロンの牧場という単語はユダヤ教キリスト教における理想郷を意味するとのこと。

旧約聖書の雅歌にて語られるシャロンの薔薇は純潔の象徴とされ、その植物は一般的にムクゲを指すようだが、他にもクロッカスやチューリップなど様々な説がある。

総じて考えてみると、その名前自体に直接何かが絡んでいるというわけではなく、ジークアクスに出てきた重要な要素に合わせる用途で引用してきた単語なのかもしれない。


小説版ではグラナダをあっさり放棄していたキシリアだが、ジークアクス世界線でのグラナダを固守しようとするあの態度の理由には単に彼女自身の性格が変化しただけではなく、絶対にグラナダを守り拔かなければならないという明確な理由があったのだと思われる。それこそがシャロンの薔薇なのだろう。

ジオン・ズム・ダイクンが掲げたニュータイプ論をあくまで国民を扇動して自信の政治的発言力を強化する為の手段(プロパガンダ)として捉え、MAの量産を推し進めていたギレンとは反対に、キシリアニュータイプに対して理解が深く、その本質と可能性に気づき、ガンダムの量産計画を確立させた。

マリガンが語っていたキシリアの遠大な計画とは(結果的に)戦局を変えるほどの力を持つグラナダの地下に隠されたオブジェクトの運用、使役であり、実現させるには赤いガンダムとそれに乗るシャアでなければならなかった、つまりその実態はシャアと何らかの関係がある存在であることがうかがえる。


ではシャロン薔薇とは一体何だったのか。作中では一切説明が無かったその正体を暗示する資料として挙げられるのが、富野由悠季氏による『機動戦士ガンダム』の構想が記されたメモ、通称トミノメモだ。

TV版で放送されたファーストガンダムは全43話だが、当時の視聴率が振るわなかった関係で打ち切りという形で終盤のエピソードが短縮されている。その本来なら放送されるはずだった52話までのあらすじが書かれたメモは実際に放送された話と展開が異なり、メモにのみ登場するMSも存在する。つまりもともと富野監督が考えていたガンダムはTV版で既に歴史改変されていたことになる。


ガンダム界の死海文書となり得る資料『トミノメモ』

シャロンの薔薇に関係すると考えられるエピソードとしては
第44話『エルメスララァ』と第45話『遭遇!ララァ

第44話では、月面の地中からエルメスがドク(正史でのビットに相当)を操りセイラ・マスに重傷を負わせ、アムロエルメスの本体を地中に見つけるとそれを倒すべく地中に向かう。

第45話では、地中でアムロ・レイが駆るGブル(ガンダム)とララァ・スンエルメスが対峙する。その戦闘中に正史の第41話『光る宇宙』のようにアムロララァは精神感応で通じ合い一つの未来を垣間見る。そしてシャア・アズナブルガルバルディというMSに搭乗し戦線に加わり、三者の戦いが繰り広げられる。最終的にはアムロが隙を突いてシャアを討とうとした瞬間にシャアを庇ってララァが命を落とす。

トミノメモではララァの操縦するエルメスは月面の地下に隠された超遠隔兵器だった。

つまり、月の地下から消失した『シャロンの薔薇』という謎の存在はトミノメモに記されたエルメスとそれを操るララァなのかもしれない。

ジークアクス世界線ではシャアがアムロララァに出会うことはなかったが、特異なニュータイプであるララァフラナガン機関に目をつけられ、もしもニュータイプ研究所に引き取られていたとしたら…月面基地の地下に隠されたシャロンの薔薇がその答えに繋がるのではないだろうか。

 

小説版との違い

アニメ版の正史ではシャリア・ブルは高い能力を持ちながらもエルメスに劣るブラウ・ブロに乗り、あっさり戦死してしまうララァの前座的な立ち位置だった。

しかし全3巻の小説版ではララァが1巻で戦死し、シャリアは2巻で初登場しており、この時点で2人の役割が逆転している。

彼はリック・ドムを操り活躍した後、シャアの同志となり、彼を支え、足りない部分を補佐しながら共に戦う戦友として描かれていた。(アムロからはシャア以上のニュータイプだと評価されている)

小説版のシャリア・ブルはBeginningでのイメージと合致する箇所が多く最終的には戦死するが、シャアとアムロ、ひいてはシャアとペガサス隊を繋げるジオンと連邦、2人の主人公を1つにするための犠牲という役割を担っている。

ジークアクスにおけるシャリアがもし小説版のイメージを持つ存在なのであれば彼の立ち位置は純粋なジオンの士官ではないのかもしれない。

また、一年戦争の終わり方にも共通点があり、ジークアクス世界線においてもジオンが勝利をおさめているが、小説版では連邦軍の戦闘継続能力が無くなり講和が結ばれるという展開。これはジオンが勝利したと見てほとんど差し支えのない内容と言える。

つまりジークアクス世界線一年戦争の仮想戦記として現代に現れたが、遡ればギレンの野望のようにIFの世界を描いたゲーム作品もあればトミノメモのようにTV版の正史とは異なる構想も既に存在していたのだ。

 

キラキラ

神秘的な光が見えたマチュが名付けたキラキラという謎の現象はゼクノヴァ発生時にシャアが見たものと似ており、その際に「ラ、ラー」という不思議な声が聞こえてくる。

この描写は劇場のパンフレットによると庵野監督からのアイデアだとされていて正史の第41話『光る宇宙』にてアムロララァが意識を交感するシーンをハルシネーションとして捉え、ニュータイプが持つ特殊な知覚によって見える現象を意図していると語られている。

また、正史でララァがコンペイトウに攻撃を仕掛ける際、ニュータイプの素養がある兵士たちには「ラ、ラ」という声が聞こえているという描写を拡大解釈していると記されていることから、あの声とララァが関わっていることは間違いなさそうだ。

そしてシャアの「刻が、見える…」という発言も正史の台詞として出ていた。

機動戦士ガンダム』第41話 光る宇宙
ニュータイプとして覚醒していたアムロエルメスと交戦していた。ことごとく先読みをされ一基、また一基とビットは撃ち落とされていき、ビームライフルが破壊された後もアムロビームサーベルで切り落としていった。

戦闘中、ニュータイプの交信でアムロララァと会話をする。貴方には守るべき家族も故郷もないというのになぜ戦うのか、それは不自然だと。ではなぜララァは戦うのかとアムロが聞き返すと彼女は救ってくれた人のために戦っていると答える。それは人の生きるための心理なのだと。

この会話の最中にもまばゆい煌めきのような演出が見て取れる。突如その光の中からシャアのゲルググが現れガンダムと刃を交える。すかさずララァがシャアの援護にまわる。
そこにセイラの乗ったGファイターが加わり、ゲルググのビームナギナタの一振りが彼女の機体に斬りかかろうとした瞬間、ララァが「大佐いけない!」と強く呼びかける。間一髪のところでシャアは止まり「アルテイシアか」と呟き、その一瞬の隙を突いてガンダムゲルググの腕を切り落とし、アムロがシャアにとどめを刺そうとした矢先、止めに入ったエルメスガンダムビームサーベルが突き刺さる。その刹那、2人が精神世界のような場所で会話する描写が流れる。

「人は変わっていくのね。私たちと同じように」
「そ、そうだよララァの言う通りだ」
アムロは本当に信じて?」
「し、信じるさ。君ともこうして分かり合えたんだから」
「人はいつか時間さえ支配することができるさ」
「あぁアムロ、刻が見える」

そしてまばゆい光に覆われてエルメスが爆発する光景を目の当たりにしたシャアとアムロは号泣する。

 


機動戦士ガンダムUC』にて主人公のバナージ・リンクスは既に時間を超越しており、『機動戦士Ζガンダム』においては主人公のカミーユ・ビダンを霊的な存在となって支えている者達が描かれている。

これらの超常現象から推察するにキラキラはララァ世界線を越えていることを示唆しているのではないだろうか。

そしてシャアの言っていた向こう側とはもしかしたら正史の世界線かもしれないし、ニュータイプが見ることのできる死後の世界、もしくはループや2周目といった可能性も拭いきれないが、この現象は尽きることのない様々な考察の余地が残された設定だと感じた。


入場者特典第2弾の『DESIGN WORKS』では最後の29ページ目に作中内でも描かれていた様々なグラフィティが掲載されているが、その中にララァと深く関わりのある一文が記載されている。

それはシュウジが描いたとされるキラキラのグラフィティに関する文のようで

渦や濁流のなかで 果てや中心は見えない

中心があるとすれば とんがり帽子の蓮?

引用元:『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』DESIGN WORKS

と書かれていて渦のような模様の中心に淡い緑色の何かが抽象的に描かれている。正史ではエルメスのことをホワイトベース隊のクルーはとんがり帽子と呼んでいた。

つまりこのページに書かれていた何気ない一文はこの世界線でのララァの存在を示しているものになり、シュウジは向こう側でララァを観測していたと考えられる。

機動戦士ガンダムの劇場版では、交戦前にホワイトベースに送られたデータ画像で本機の姿を初めて見たミライが「チューリップだかとんがり帽子みたいなの」と呼び、アムロはビットを「とんがり帽子の付録」と呼んでいた。

 

最後に

もはやロボットアニメの古典とも言えるガンダムシリーズ作品。その原点となる一年戦争を令和のこの時代に仮想戦記として描いた『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』は新たな感動と体験を与えてくれた。

立場的にはごく普通の女子高生であるマチュが危険なクランバトルに参加する目的、それは平穏な日常では味わえないスリルだったり、見たこともないような光景かもしれない。そんなキラキラを追い求めた先に2度目のゼクノヴァ(セカンドインパクト)が起こる可能性も否めないが、新たに再構築された宇宙世紀の未知なる歴史を固唾を呑んでまもなく始まるTVシリーズの放送に備えるとしよう。


最後にもう1つ。
実はマチュの所持品にはある共通点が存在する。

彼女のスマホケースには赤いクラゲの装飾が施されており、スマホの待受画面にはクラゲが映っていた。そして耳には赤い月の形をしたピアスを付けている(クラゲは漢字で海月)ためマチュの所持品からは赤とクラゲという要素を意図的に意識しているように感じられる。

作中では時折マチュが自由を求めているような言動をしており、シュウジの海を泳ぐ魚のようにもっと自由にという言葉を聞いて勝機を見出すなど、その自由の表現は海と関係しているように思える。

その関係性を探るためにネットの海を泳いでいるとこんな情報を見つけた。

それはブラックシーネットルという赤いクラゲ。
その泳ぐ姿はまるで宇宙を駆ける赤い彗星のように見える。

もしかしたらこの先、ニュータイプとして覚醒したマチュ自身が赤い彗星の再来となり、シャリア・ブルを筆頭にキラキラの彼方に消えた赤い彗星を追っていく(光っていく)物語になるのかもしれない。

 

 

  ~その他の小ネタ~

 

 

<参考/引用元>
機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)@G_GQuuuuuuX
©創通・サンライズ